【夢の湊】三万アクセス御礼掌編『鳥瞰・海辺の都市へ』をお読みいただき、ありがとうございます。
この掌編は、『妖魔の島』、『海人の都』、『月影の歌う木々』とつづくシリーズ(シアとエスカというふたりの少年少女が主人公である、という共通項を持った物語)の一編です。時系列では『月影の歌う木々』のすぐあと、つまりいまの時点では一番あたらしい時点でのふたりの状況を描いたものではありますが、ここには、これまでの三作でおきた出来事もかいつまんで語られています。シリーズをおさらいするのに、ちょうどいい構成になっているかもしれません。
もともとこの原稿は、『月影の歌う木々』のつぎのエピソードとして書きかけたものの、途中で投げだしたものの冒頭部分です。
私は新しいファイルを作るときには一番始めにその日の日付をたいてい入れているんですが、このファイルの第一行目には「1993.10.5」と入力されていました。時間の経過をしみじみと感じます。
原稿そのものはこのあとしばらくつづけて書かれた後、べつのバージョンにとって代わられて、そのあとは推察されるとおり放置されるに任されておりました。
それから長いブランクを経てサイトを開設し、シリーズを逆の順序で公開してきたわけですが、そのあいだにいろいろと考えた結果、おそらくいまからつづきを書くとしてもこのシーンは使われないだろうという結論に至りました。
このたび、三万ヒットの御礼として公開させていただくことにしましたのは、新しい作品を書いている余裕がないという理由が主ではありますが、このシーンをなかったことにしてしまうのも忍びない、という未練のなせるわざでもあります。
作品としてはいろいろと問題のある掌編ですが、愛着のあるシーンでもあり、楽しんでいただけると嬉しいです。
ところで、文中に「トリエステ」という名の都市が出てきますが、これは実在するイタリアの都市とはまったくなんの関係もございません。作者がきちんと調べておかなかった手落ちですが、『月影の歌う木々』を公開してからすでに三年経ち、いまさら変更するのもヘンかと思い、そのまま使用させていただいております。どうかご了解いただきたいと存じます。
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