prev ラミア7 next




 館は森に朽ち、森に還った。
 みたりの魔物の骸は夜風にさらわれ、いずこへともなく消え、月影のした、かつての城の礎かとおぼしき石が残った。
 それは幾百年の年月を経て、風雪に耐えぬきしものの重みをもち、見るものにせまった。
 呪われた王国の最後まで残った呪いは、ようやくとけた。
 異界との境界も、ほんのすこしではあるものの、後退したように見える。
 騎士は館をあとに、森の奥へとむかった。みちびかれるままに、なにをかわからぬものをもとめて。
 その顔はきのうと変わらぬように見えたが、胸のうちにやどる心には、またひとつ、ふかき傷を負っていた。
 ながれでる血液は、あわれなる王女たちのかわきの苦しみを癒せるであろうか。
 すでに必要なきものであるにはちがいないにしても。〈了〉



面白いと思われたら押してやってください。

Prev [page-6] Next [あとがき]

ラミア[HOME]

HOME Original Stories MENU BBS
Copyright © 2000- Yumenominato. All Rights Reserved.